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THE WEMMER presents.「FEVER OF SHIZUOKA  SECRET HOTEL」


2016年3月20日(日)ホテルテトラリゾート静岡やいづ

 

 静岡を拠点に活動するTHE WEMMER が中心となり、3回目を迎えた“FEVER OF SHIZUOKA”。1回目、2回目は静岡市内の複数のライブハウスでサーキット形式のイベントを行っていたが、今回は静岡県焼津市にある「ホテルテトラリゾート静岡やいづ」というリゾートホテルで、全13組が出演する“FEVER OF SHIZUOKA”が開催された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 今回の“FEVER OF SHIZUOKA”は、タイトルに“SECRET HOTEL”と付いているが、これが何を意味するのか。今年のイベントは“秘密に飛び込め”というコンセプトがあり、THE WEMMER以外の出演者が全部シークレットだったのだ。あまりに大胆なこの企画。前売りチケット購入者(秘密に飛び込んだ人)は事前に出演者の情報が教えてもらえたものの、公には出演者の情報は告知されておらず、まさに「誰ん出るだかしん」(静岡の方言。“誰が出るのかなぁ”という感じの訳)という、ずっとワクワクとドキドキが止まらないイベントだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前夜祭となった19日の“FEVER OF YAIZU”は朝から大雨に見舞われたが、午後には晴れ間が覗き、イベント開始の16時にはすっかり良い天気。ゆったりとした雰囲気でイベントが行われた。20日は天気予報は曇り。降水確率は20%とかなり微妙な感じ。しかし、天候なんておかまいなし、開演前には秘密に飛び込んだ大勢のオーディエンスが会場を訪れ、スタート時間になると入口近くに設置されたトレーラーステージの前は人であふれていた。

 10時55分、このイベントの主催者であるTHE WEMMERのロッキーを始めメンバーが登場すると、大きな歓声が沸き起こる。まずはロッキーの開会宣言から。開会宣言中、どんよりとした雲の間から太陽が顔を出すというミラクルが起き、今日のイベントが素晴らしいものになることを予感させた。この後、THE WEMMERが2曲演奏。まだまだ雲が多い空に向けて突き破るような強烈なサウンドを響かせ、イベントのスタートを高らかに宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日のイベントは、トレーラーステージとホテル2階にある屋外プールをステージにしたプールステージとの2つのステージが用意されており、THE WEMMERの演奏後、Zんのドラマー・カメが「次は2階だー! 早く来ーい!」と上からあおると、その言葉に引き寄せられるようにオーディエンスが移動ルートである螺旋階段をぐるぐると回りながらプールステージに押し寄せる。水が抜かれているプール内にオーディエンスが入り、Zんのステージから放たれるビートを全身で浴びていた。続いて、トレーラーステージには磐田からやってきたRING MY HELLが登場。3人ともとても愛嬌のある表情をしているが、演奏を始めるとその顔が引き締まり、タイトなリズムでオーディエンスを踊らせていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてプールステージではcar10が演奏を始める。リバーブがかかったボーカルが楽曲に浮遊感を与え、空間を支配していく。外で聴くには最高のサウンドだ。続いて、トレーラーステージではツダイーン。静岡のテクノポップバンド。ボーカル・JIMMYの圧倒的なダンスパフォーマンスに、オーディエンスの顔には自然と笑顔がこぼれていた。お次はプールステージでStupid Babies Go Mad。静岡のハードコアの重鎮と言われる彼ら。ハードでハイスピードなナンバーを叩き付ける。ボーカルが会場をゆっくりと歩き回りオーディエンスにマイクを向けると、向けられた女性がこれでもかと言わんばかりにシャウト。オーディエンスとバンドが作り上げた最高のステージが終了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてトレーラーステージにはElectric Eel Shockが登場。SEからすでに盛り上がりを見せていたイールショック。ジャイアンはスティックを左右の手に2本ずつ持ち、局部にはソックスをかぶせるというスタイルで演奏。ライブ中、オーディエンスはモッシュ&ダイブで大盛り上がり。圧巻のステージだった。続いてプールステージではクロキユウタ。この日唯一のアコースティックギターで弾き語りでの出演だ。あたたかなギターの音色と歌が会場を包んで行く。「バンドばかりの中に入ると燃えるタイプ」と本人が言っていたように、実に堂々としたステージだった。その後トレーラーステージではThe Cavemans。ボーカルAKIYUKIのハイトーンボイスとレゲエを主体としたサウンド、そして海を身近に感じるこのロケーションがオーディエンスの感情をより高まらせ、フロアを揺していた。続く、プールステージでは、静岡市のバンド・herpianoが登場。1曲目の演奏途中でドラムのペダルが壊れるというアクシデントがあったが、海沿いの野外イベントにぴったりの、心地よい「うた」を聴かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 続いてトレーラーステージにはmojaが登場。MCは取っ付きやすそうな人柄が出ているが、演奏が始まると2人から出る緊張感がたまらない。パワフルでハイスピードなドラムと轟音ギターがなり鳴り響いていた。そしてプールステージではKING BROTHERS。THE WEMMERの憧れのバンドであり、高校生の時にも自分たちが企画するイベントに出演してもらったことがあるそう。この日のキンブラも相変わらずキレッキレのライブだった。プールの中央に設置された超VIP席まで行きたいと言ったマーヤをオーディエンスがかついで運んだのだが、そうではなく一歩一歩歩くように向かいたいとのことで仕切り直し。オーディエンスが協力し合い、身体を張って作りあげた道を一歩一歩進むマーヤ。ライブの最後にはメンバー全員が中央のVIP席にすべての楽器を移動して演奏。迫力のパフォーマンスは、のどかな焼津の町に大きな爪痕を残したのではないだろうか。そしてトレーラーステージでは最後のアーティストKMC & STUTS。CDJを手配し忘れてCDプレイヤーでライブをするというハプニングもあったが、凄まじいエネルギーが渦巻いた最高のライブパフォーマンスでオーディエンスを熱狂の渦に巻き込み、ラストのTHE WEMMERへバトンを渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プールステージに登場したのはこの日のトリであり主催のTHE WEMMER。1曲目ではライブが終わったばかりのKMCとのコラボレーション曲『do the stupid』でフロアをぶち上げる。さらにアメリカツアーを一緒にまわったティータイム山本とのステージも。演奏後ロッキーが今回の開催に至る経緯を話し始めた。「イベントの1回目、2回目を開催して、辛い事が多すぎてしまったんです。静岡の音楽シーンに未来はないとも思い、昨年末の大掃除で押し入れにしまっていたリストバンドを捨てようと思っていた時に、テトラリゾートからライブイベントをやらないかという電話があったんです。ホテルの下見に来た時に“FEVER OF SHIZUOKA”に対するアイディアがわいてきて、もう一度イベントをやりたいと思い、メンバーに言って一気に動き出しました。これまでは(このイベントは)自分1人でやってる気持ちだったけれど、たくさんの人が協力してくれて、みんなで作っているものなんだというのを今回実感しています」と。静岡を拠点に活動している若干24歳の彼らが野外イベントを行い、12組ものバンドに出演してもらうというのは並大抵のことではないし、相当のプレッシャーがあったと思う。さらに出演者はシークレットという前代未聞のイベントではあったが、それでも、今日こんなにも多くのオーディエンスが彼らの企画に賛同して会場を訪れ、出演者の最高のアクトを見る事ができたのは、彼らの人柄と努力による賜物だろう。ライブはこの後『VIBEは今夜』で大団円を迎え、18時を少し過ぎて月が彼らのステージを照らす中、最後は『『27才』が演奏された。ここまでのコール&レスポンスや轟音を響かせていた楽曲から一転し、静かなこの曲に大勢のオーディエンスがじっくり聴き入っていた。こうして全13組のライブが終了。全てを楽しんだオーディエンスの姿もあり、終演後会場には充実感があふれていた。

 静岡は東京と愛知の間の位置にあり、バンドがライブで立ち寄らない土地と言われているが、THE WEMMERのような若いバンドがこういう企画を通して自分たちがおすすめするかっこいいバンドをたくさん教えてくれるのはオーディエンスにとっても刺激的だろうし、何よりこうした一歩が静岡シティの音楽シーンを変えて行くのではないかと思う。MC中、ロッキーが「イベントは僕の気分でまたやります」と言うと、「待ってるよ!」という返事がフロアから聞こえていた。イベントを行うのは大変だと思うが、ぜひまた“FEVER OF SHIZUOKA”を開催してもらいたいと切に思う

素晴らしいイベントだった。

 

(TEXT:やまだともこ)

(PHOTO : MASAKI UNO)

 

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